物忘れを気にされ、呆けてきたと、心配される方、またはその方のご家族は多いと思います。認知症という言葉は、10年くらい前までは使われておらず痴呆症と言われていました。痴呆という言葉が、やや差別的なニュアンスのため使われなくなってきました。
そもそも認知症というのは、病気の正確な名前でなく、多彩な症状を呈する症候群の事をいいます。その原因も様々です。その中の症状に物忘れは当然あります。
物忘れは、歳をとれば誰でも経験するものです。そこで「健康な高齢者の物忘れ」と「認知症性高齢者の物忘れ」の違いを理解しておくことは、大切なことです。たとえば、私も朝食のおかずが何だったか思い出せないことがあります。しかし朝食を食べたことは、忘れません。認知症の場合は、朝食を食べた事自体をすっかり忘れてしまいます。そこで食後まもなく、「ごはんはまだか?まだ食べていない」などと言ったりします。すなわち、健常者のもの忘れは、体験の一部に限られていますが、認知症では体験の全体が頭の中に入っていないのです。
健常人の場合、たとえ、名前や物の名前がなかなか思い出せなくても、それが進行することはありません。一方、認知症の中にアルツハイマー型認知症という認知症があります。症状は、物忘れに限らず少しずつ、進行していきます。認知症という症候群の最大の特徴は、まさにこれです。
認知症の症状は、前にも述べましたが、色々な原因で起こりえます。
手術でよくなるものや薬がよく効く場合もあります。大切なのは、どうして物忘れを初めとする、色々な認知症の症状があるか、きちんと調べることです。もちろん進行する認知症状を止められない場合も多くあります。
私を含め、特に健常高齢者の方の物忘れは年齢に伴うものであって、物忘れがあっても、それなりには日常生活を送っていることが多いのも事実です。
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