−あなたの骨は大丈夫ですか−
今回のテーマは“骨粗鬆症の自己評価”です。
まず初めに貴方に骨粗鬆症になりやすい要素があるかどうかを見てください。その要素として、遺伝的要素(血族に骨粗鬆症で苦しんでいたり、大腿骨の付け根を骨折した方がいるかどうか)、身体的要素(極端にやせている方、低栄養の方)、生活様式(運動不足、喫煙、過度な飲酒)、薬物性要素(ステロイドを長期服用)、婦人科的疾患(卵巣機能障害、閉経時期が早期の方、卵巣全摘出術をされた方)、その他疾患(甲状腺機能亢進症、糖尿病、腎不全、肝不全)などがあります。これらの要素を多くもっている方ほど骨粗鬆症になりやすい、つまり若くして骨粗鬆症になっている危険性が高い事を意味します。
さて、いかがでしょうか。危険因子を持っていないと安心している方、残念ながら骨粗鬆症が起らないわけではありません。年齢を重ねれば骨の老化現象が起りますので骨の脆弱化が進んでいきます。ただ、骨が弱くなっても簡単に骨折を起こさなければ問題はないのです。つまり骨の強度が正確に計測できれば、大変有意義なのですが、実は大変難しいのです。ところがこの話を私の外来を受診された患者様にしますと必ず、“骨密度測定ではダメなのですか?”とか、“この前、検診で骨密度を測ったら同年齢より良いといわれたけどダメなのですか?”などの質問がかえってきます。実は骨密度は骨内のカルシウム化合物の量に相関しています。以前にもお話しましたが骨の強度はこのカルシウム化合物だけでなくそれをつなぎとめているコラーゲンも重要である事をお話しました。つまり骨密度=骨強度ではないのです。骨密度が正常なら骨強度は大丈夫とはいえないのです。よって、骨強度を検討する場合、骨密度だけでなく、レントゲン、血液・尿検査などあらゆる角度から検討し、総合的に評価しないとわかりません。しかし、だからといって骨密度がまったく役に立たないわけではありません。正しく骨密度を理解していただければ大変役に立つ方法です。以下の点に気をつけてみてください。
まず、骨密度の計測をされる場合、X線を利用して測定する方法で、しかも骨折しやすい部位である脊椎、股関節頸部、手首の骨で計測する方法(器械)をお薦めいたします。そして、65歳以上の女性の方は骨密度の値が骨の脆弱性と相関することがわかっています。検診として利用されると良いと思います。そして、その結果を見るとき必ず、YAM値またはTスコアを見てください。(同年齢との比較は参考までに)これは若年者(20-45歳)の骨密度を100%にしたときの貴方の骨密度が何%であるかを示したものです。80%以下であれば注意、70%以下なら要注意であります。また、81%以上であっても1-2年に1回骨密度測定をして比較をしてください。その際、必ず同じ器械で同じ部位を測定するようにしてください。骨密度の低下が早い方はやはり注意が必要です。
また、身体的な要素から骨粗鬆症を予測することが出来ます。@[体重(kg)−年齢(歳)]×0.2の計算値が−4未満の方。A25歳のときからの身長短縮が4cm以上の方。(1cm/年の短縮)B亀背のある方(背中が丸い)。以上3つの条件に当てはまる方は症状がなくてもかなりの確立で骨粗鬆症になっている可能性があります。是非、整形外科を受診して総合的な検査、適切なアドバイスをしてもらってください。
それでは最後にまとめますと、まず骨粗鬆症になりやすい体質であるかを検討。骨密度測定を正しく行い、その結果を正しく見ること。身体的変化として体重、身長、姿勢に異常があれば専門医に相談すること。以上の点についてお話させてもらいました。
―丈夫な骨づくりのための食生活−
今回は具体的な各栄養素の働きと食品について説明させてもらいます。
まずは骨の主成分でありますカルシウムについて説明いたします。カルシウムの多い食品といえば皆様が口を揃えて答えてくれるのが“牛乳”です。牛乳や乳製品はカルシウムの吸収率が良い食品とされております。しかし、“牛乳”にはいくつかの問題点があります。その1つに日本人には“牛乳”を消化する酵素が乏しい人が意外と多く存在することです。“牛乳”を飲むと軟便になったり下痢をしたり、お腹がギュルギュル鳴ったりする方がいらっしゃると思います。そういう方々は実は腸では拒絶反応が起こっていて、吸収が阻害されている可能性が高いのです。そういう方々は無理に“牛乳”を摂取せず、他の食品でカルシウムを補うほうがよろしいと思います。本来、日本人は農耕民族であり、植物性食品から栄養素を吸収するのに適合した民族なのです。小松菜やほうれん草などの緑黄野菜、大豆食品、海藻類からのカルシウム摂取をお薦めいたします。特に骨粗鬆症年齢の方々は動物性食品を取りすぎますとコルステロールが高くなったり、体重が増えてしまったりするので気をつけてください。
次にカルシウムの吸収を促進するものと阻害する食品を説明いたします。カルシウムの吸収を良くする代表的な栄養素がビタミンDです。詳しくは後で説明いたします。また、マグネシウムはカルシウムの代謝にはなくてはならない栄養素です。最近話題になってきましたがカルシウムと同じぐらい重要なミネラルで、大豆食品、玄米、ナッツなどに比較的多く含まれています。一方、動物性たんぱく質、インスタント食品に大量に含まれているリンはカルシウムの吸収を妨げます。特に若年層のインスタント食品の摂取率は最近増加傾向にあり、将来この世代が骨粗鬆症年齢になった時、今以上の骨粗鬆症の方が発生するのではないかと、研究者らが危惧しております。嗜好品ではタバコはカルシウムの吸収を妨げてしまうばかりか、椎間板の老化現象を早めますので、脊椎の変形が起こりやすくなります。また、お酒やコーヒーは適量なら問題ありませんが、飲みすぎますと尿へカルシウムが大量に排出されてしまいます。
次に先ほど出てきたビタミンDについて説明いたします。ビタミンDは干しシイタケなどの乾物やカツオなどの魚肉などの食品に多く含まれ、摂取することで吸収されますが、一方で皮膚でも合成される栄養素です。ビタミンDは腸でのカルシウムの吸収を助ける働きがありますが、吸収や合成されたばかりのビタミンDにはそのような作用はありません。肝臓や腎臓で活性型ビタミンDに変化して初めてカルシウムの代謝をよくしてくれます。よって、肝臓や腎臓の悪い方はビタミンDの作用が悪く骨粗鬆症になりやすい体質となります。また、皮膚で作られるビタミンDは合成されるのに紫外線が必要です。日光浴が必要な理由はこのためなのです。よって、窓越しの日光浴のように紫外線が遮られる場合は有効ではありません。屋外で適度な日光浴をしてください。1日に15分ほどの日光浴にて骨折抑制の効果があったとの報告があります。
次にビタミンKについてお話いたします。ビタミンKは主に植物に由来するビタミンK1と微生物に由来するビタミンK2に分けることが出来ます。その内、骨粗鬆症の予防になるのは後者のビタミンK2です。納豆や味噌のような発酵食品に多く含まれております。その作用は骨の質を改善し、折れにくい骨を造る作用があります。
以上、骨の老化の予防に役立つ食品を簡単に説明させてもらいました。いずれも予防のための食品であり、骨粗鬆症の治療のためのものではありません。骨粗鬆症にならないように、またはなっていくのを遅らすためのものです。短期間に上記の食品を大量に摂取しても効果はありません。偏った食生活はむしろ“害”となりますのでご注意ください。次は骨粗鬆症の治療薬について説明させていただきます。
|